競走馬のたてがみ1本から薬物投与の履歴を高精度に解析する新手法を開発
福島大学食農学類の平 修らの研究グループによる研究成果が、国際学術誌 Forensic Science International に掲載されました。
論文タイトルは
“Millimeter-segmental analysis of individual equine mane hairs by LC/HRMS for revealing chronological drug distribution in anti-doping investigations”
です。
本研究では、競走馬のたてがみ1本を2 mmずつ細かく分割し、それぞれの区間に含まれる薬物を液体クロマトグラフィー/高分解能質量分析(LC/HRMS)で測定する方法を開発しました。従来の毛髪分析では、複数の毛をまとめたり、cm単位で分析したりすることが多く、薬物が「いつ体内に入ったのか」という時間情報を詳細に把握することが困難でした。今回の手法では、1本のたてがみから、より高い時間分解能で薬物の履歴を解析することが可能となります。
研究では、競走馬の禁止薬物である**オシロドロスタット(osilodrostat)**をモデル化合物として用い、投与後1、2、3、6か月のたてがみを解析しました。その結果、薬物濃度が最も高い位置は、毛の根元から平均してそれぞれ 6 mm、28 mm、56 mm、118 mmへと時間経過に伴って移動していました。さらに、薬物は広範囲に拡散するのではなく、比較的狭い領域に明瞭なピークとして残ることが示されました。
この結果は、毛が伸びることで、過去の薬物曝露の情報が毛の長軸方向に時間軸として保存されることを示しています。将来的には、競走馬におけるドーピング検査において、薬物の検出だけでなく、投与された時期の推定や、体内への実際の取り込みと外部汚染との識別にも役立つことが期待されます。
本研究は、著者らの知る限り、競走馬のたてがみを対象として、ミリメートル単位の分割とLC/HRMSを組み合わせた分析法を確立した初めての研究です。
論文情報
Ryo Shigematsu, Rie Osame, Naoko Yokotsuka, Shunsuke Takemoto, Yohei Minamijima, Takayuki Furukawa, Misato Hirano-Kodaira, Masayuki Yamada, Gary Ngai-Wa Leung, Shu Taira
Millimeter-segmental analysis of individual equine mane hairs by LC/HRMS for revealing chronological drug distribution in anti-doping investigations
Forensic Science International, Article 113144
DOI: 10.1016/j.forsciint.2026.113144